かつらぎ歯科医院

インプラント周囲炎とは？

インプラント周囲炎とは、インプラントを行った部位の周囲に生じる炎症を指します。この炎症は、主にインプラントを支える骨や歯肉（インプラント周囲の軟組織）に影響を及ぼし、放置すると支えとなる骨が失われ、最悪の場合にはインプラントが抜け落ちてしまう危険性があります。

インプラント治療は虫歯のリスクがない一方で、適切にケアを行わないとこうしたトラブルに繋がってしまうため、治療後も継続的な予防ケアが欠かせません。

インプラント周囲炎と歯周病との違い

歯周病は天然歯を支える歯肉や骨に炎症を引き起こす疾患で、日本人の多くが患っている病気です。一方で、インプラント周囲炎は、インプラントを支える人工構造とその周辺の組織に生じる炎症です。

大きな違いは、インプラントには歯根膜が存在しない点にあります。歯根膜のないインプラントは炎症が骨に直接影響しやすく、症状の進行が早いという特徴があります。そのため、歯周病よりも注意深いメンテナンスが必要とされるのです。

インプラント周囲炎が発症する原因とは？

インプラント周囲炎が発症する主な原因は細菌による炎症です。インプラント周囲の歯肉や人工歯にバイオフィルム（歯垢）や歯周病菌が蓄積すると、歯肉に炎症が起こり、これが進行するにつれて骨にもダメージが及びます。

また、日々のブラッシングが不十分である場合や歯科医院での定期的なクリーニングを怠ることも原因となり得ます。
さらに、全身の健康状態や喫煙、糖尿病などのリスク要因も関与することで、炎症がさらに悪化することがあります。

１．プラークやバイオフィルムの影響

インプラント周囲炎の主な原因として挙げられるのが、プラークやバイオフィルムの形成です。プラークは細菌の塊であり、歯やインプラントの表面に付着します。このプラークが除去されずに放置されると、バイオフィルムと呼ばれる細菌の保護膜が形成され、炎症の引き金となります。

天然歯と異なり、インプラントには歯根膜がないため、細菌が直接骨に影響を及ぼしやすいのが特徴です。そのため、適切なセルフケアが不可欠です。

２．ブラッシング不足とメンテナンスの欠如

ブラッシング不足や日常的な口腔ケアの不備も、インプラント周囲炎のリスクを高める要因です。インプラントは虫歯にはならないものの、歯周病に似た症状であるインプラント周囲炎を引き起こすことがあります。

こ定期的な歯科クリニックでのメンテナンスが行われない場合、歯肉の状態が悪化し、炎症が進行する可能性が高まります。インプラントを維持するためには、日々の正しいブラッシング習慣と、歯科医院でのメンテナンスが重要です。

３．食いしばりや歯ぎしりの影響

食いしばりや歯ぎしりは、インプラントにも悪影響を及ぼします。過剰な力がインプラントに加わることで、歯肉や骨に負担がかかり、炎症や損傷が加速するリスクがあります。

特に夜間に食いしばりや歯ぎしりを行う方は、自覚が難しいため、歯医者での診断や適切な対応が求められます。マウスピースを活用することで、インプラントと周囲組織を保護し、長期的な予防につなげることができます。

４．全身疾患（糖尿病など）の影響

糖尿病は血糖値のコントロール不良を引き起こし、体全体の免疫力を低下させるため、インプラント周囲炎の発症リスクを高める要因の一つです。他にも、喫煙や貧血といった全身的な疾患や生活習慣が、歯肉や骨の健康を損ない、炎症を招きやすくなります。

インプラントを維持するためには、全身の健康状態を整え、歯医者での定期的な検診とアドバイスを受けることが不可欠です。

インプラント周囲炎の初期症状

１．歯肉の発赤と腫れ

インプラント周囲炎の初期症状でよく見られるのが、歯肉に赤みや腫れが生じることです。この状態はインプラントの周りに細菌性プラークが溜まり、炎症が発生することが原因とされています。ただし、痛みを伴わないことが多いため、自分では気付きにくい場合があります。日々のブラッシング時や鏡を見ながらのセルフチェックが重要です。

２．ブラッシング時の出血

歯肉の炎症が進むと、ブラッシング時に出血することがあります。この段階でもまだ痛みを感じないことが多く、症状が軽視されてしまうリスクがあります。特にインプラント治療を行った部分での出血がみられる場合は、早めに歯医者で状態を確認することをおすすめします。出血は歯周病にも見られる症状ですが、インプラント周囲炎は放置すると深刻な問題に繋がることがあるため注意が必要です。

３．口臭の悪化

インプラント周囲炎が進行していくと、歯肉の退縮が進行していくことでインプラントの金属部分が露出してきます。さらに、インプラントを支えている周囲の骨が徐々に減少していく事でインプラント自体に揺れや違和感を感じることがあります。

この段階ではインプラントを支える骨が影響を受けている可能性が高く、すでに重度に進行した状態と考えられます。最悪の場合にはインプラントが機能を失って脱落するリスクが高く、骨移植や再手術が必要になってきます。

インプラント治療は複雑かつ費用がかさむことになりますので、日常生活の中で違和感を覚えたら、早急に歯医者に相談してください。

インプラント周囲炎を防ぐための予防策

１．日々の正しいブラッシング方法

インプラント周囲炎を予防するためには、日々のブラッシングが欠かせません。特にインプラント周囲は汚れが溜まりやすいため、天然歯以上に丁寧なケアが求められます。通常の歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなどを使用して、プラークやバイオフィルムをしっかり取り除くことが重要です。また、インプラント周囲の歯肉を傷つけないよう、適切な力加減で歯磨きを行いましょう。

２．歯科医院での定期メンテナンス

インプラント周囲炎のリスクを減らすためには、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。自分では取り切れないプラークや歯石を歯科医師・歯科衛生士によるクリーニングで除去することが、インプラントの長期的な健康を保つ鍵です。

歯周病やインプラント周囲炎が初期の段階で発見されることも多いので、3か月に1回程度は歯科検診を受けることをお勧めします。

３．食いしばり対策とマウスピースの活用

食いしばりや歯ぎしりがある方は、インプラント周囲の骨や歯肉に余分な力を加える原因となり、炎症や不調を引き起こすリスクがあります。これを防ぐために、就寝時のマウスピースの使用が効果的です。歯医者で自分の口の状態に合ったマウスピースを作製してもらい、習慣的に使用することで、インプラント周囲に過剰な負担がかからないようにしましょう。

４．生活習慣や全身疾患への注意

生活習慣の改善や全身疾患の管理もインプラント周囲炎の予防には欠かせません。特に糖尿病はインプラント周囲の炎症を悪化させるリスクが高いため、血糖値のコントロールが必要です。また、喫煙はインプラント周囲の血流を悪化させることから禁煙を検討してください。健康的な食事や十分な睡眠、適度な運動などを取り入れ、体全体の状態を良好に保つことがインプラントの長持ちにもつながります。